誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承 ─ ポジショニングで食べる喜びを伝えるPOTTプログラム ─

ポジショニングの基礎知識

摂食嚥下のメカニズム;嚥下5期モデル

摂食嚥下運動は、中枢(大脳皮質)から下位の嚥下中枢・咀嚼中枢、末梢神経(脳幹からでる脳神経)へ刺激伝達により咀嚼・嚥下・上肢の諸筋肉を動かす巧妙な統合・協調作用である。摂食嚥下障害は、それらの神経系に何らかの問題が生じたときに発症する。ポジショニングは、それらの機能を理解した上で、アセスメント(評価)し、個別性のある体幹角度とポジショニング方法を選択する。またポジショニングは、摂食嚥下各々の過程で影響があり、姿勢変化と摂食嚥下の状態を理解しておくことが必要である。

先行期:口に入れるまでの段階で、何をどのように食べるか、視覚、聴覚、触覚などにより食べ物を認知し、判断する時期。この段階は、食欲や心理的要因、認知機能、上肢の運動機能等も影響する。

準備期:食物を口に取り込み、咀嚼して食塊を作り舌背中央に配置し飲み込みの準備をする時期。食物は、唇を通して口腔に取り込まれ、咀嚼し、舌を使い唾液と混ぜ合わせ一口飲み込める量にする。食塊形成するためには、口唇閉鎖、歯(義歯)での咀嚼、唾液分泌、舌や口腔周囲筋の協調運動が不可欠である。

口腔期:食物を咽頭へ送り込む時期。舌尖は、硬口蓋に押しつけられ、口腔・鼻咽腔を閉鎖し、口腔内の圧を高めて食塊を後方へ送る。準備期と同様に口唇が閉鎖と鼻咽腔が閉鎖した状態でないと嚥下と呼吸のタイミングがあわず、嚥下反射を誘発しにくくなる。

咽頭期:嚥下反射により、食塊を一瞬(0.5秒)で咽頭から食道へ送る時期。咽頭、喉頭、食道入口部が関与する。食塊が通過する時は、軟口蓋が閉鎖、舌骨と喉頭が挙上し食道入口部が開くと同時に喉頭蓋谷が下降し、声門閉鎖とともに嚥下性無呼吸が起こる。嚥下時には、多くの嚥下筋群とそれを支配する脳神経(三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、舌下神経など)が協調して働く。

食道期:食塊が重力や蠕動運動により胃に運ばれる時期。食道入口部は閉鎖し逆流を防止する。食塊が食道を通過するのは、物性により異なるが液体では3秒、固形物では8秒とされている。

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