POTTプログラム
ベッド上ポジショニング
適切なアセスメントから、ポジショニングによる体幹角度を導き出します。体幹角度は、矢状面で水平線を基準として何度体幹を前屈しているかを表します。
仰臥位はリクライニング位0度、水平線を基準として60度前屈(屈曲)しているとリクライニング位60度(体幹角度60度)です。
リクライニング位は、食塊を食道への送り込みと喉頭閉鎖のタイミングを一致させて誤嚥を防ぐ体位とされています。また食塊の流入速度を遅くさせ、喉頭閉鎖遅延の代償とされています。リクライニング30度は、患者自身で食事は目視できないため、食事介助が必要です。リクライニング位45度以上が自力摂取可能です。
食形態は、リクライニング角度により選択調整が必要です。リクライニング角度が低いほどコードは下がります。
準備物品
上肢用ピロー2(枕)足底用ピロー
足底接地用シート バスタオル1
小タオル1 サイドテーブル お盆
食材・食器・食具(スプーンなど)
角度計;デジタルやスマホアプリ使用
ベッド上の寝姿勢を整える
開始時は、ベッド周辺を片づけ、テレビを消し、食事に集中できる環境を整えます。優しく声をかけできる動作は自分でやっていただきます。
ベッドはフラットにして患者は、アライメントを整え正中に位置する。ズレ防止のために、ベッド下の屈曲部よりヒップラインを上に位置する。自力で動ける人は、介助しながら自分で上がってもらう。スライディングシート使用すると負担なくできます。
両脇にクッション、足底接地にはシートを利用して安定させます。
*足底接地
POTTプログラムの重要スキルです。実践の中で、種々の工夫を重ね現在は、写真の様に下肢の下へ袋状のシートへ枕を入れて接地します。
足底接地は姿勢の安定性が良く、体幹のずり落ちが予防できます。
リクライニング位30度
- 口腔内の移送を容易にする
- 咽頭通過が、ゆっくりとなる
- 咽頭後壁を伝うため、気管に入りにくい
- 咽頭残留の場合、梨状窩の貯留物が気管に入りにくい
リクライニング位60度
- 口腔保持が容易
- 咽頭通過速度が、やや早い
- 重力により食道に食べ物が入りやすい
- 自力摂取が可能
- 視覚情報が容易
食事介助
介助は、介助者が右利きでは患者の右側から、左利きでは患者の左側から行います。介助位置は、45度程度の斜め前で目線を合わせるようにします。食事は見る、匂う、聴く、触る、味わうことなど五感を活用することが食欲を亢進させます(先行期へのアプローチ)。介助は、対象者の舌中央にスプーン等が入るようにします(食形態により異なる場合有)。逆手からでは、スプーンが正中に入りにくく、食物の取り込みや咀嚼が困難になります。(POTT研修では、演習で実施)
一連の食事介助は、摂食訓練(直接訓練)の一部ともなるため、食形態、一口量の調整、嚥下方法、ペーシング等について意識して観察と介助を行います。水分は流入速度が固形物より速く、誤嚥のリスクは高まるため、注意深く行います。
安全に要介護者の好みや習慣に合わせた介助をめざします。そのためには、地道なトレーニングが必要です。
食事は、自分で食べるのが一番食べやすいものです。全てを介助するのではなく、できることを見つけ、さりげない介助をします。
食事の前後には、口腔ケアをします。口の中を清潔にして唾液を分泌させ、義歯があれば装着します。適切なポジショニングと口腔ケアにより、経口摂取が可能になる人はよくみられます。
食後のポジショニング
摂食嚥下障害のある人は、食事が終わると満足感と共に疲労があります。食器を速やかに片づけ、安楽な姿勢を取ります。その際のポジショニングは、足を上げ⇒上体下げ⇒足下げで、15度程度のリクライニング位にします。胃食道逆流の予防にもなります。続いて背抜き⇒尻抜き⇒足抜きを必ず行います。患者体験をすると、背抜き等の有無で安楽さに大きな違いがあることに気付きます。